みかみか

三上寛はやっぱり変わった人だな、と思う。

あの怨念じみたフォークソングを聴いて、「田園に死す」なんかに出ていたのを見れば、そうそうお茶の間に顔をあらわすことはあるまい，と思い込んでいた。
ところが、八十年代にはテレビドラマにも出ているし、情報番組にまで出ている。
「昭和の大飢饉予告編」で「オ*ンコに指突っ込んで、そのダァラダラした指でＶサイン作って、なぁんになるなんになる」と歌っていた三上寛である。
いやはや、世の中はわからない。

とはいえ、僕は初期の方しか知らなくて，それもUNCの奴しか知らないから「ひらく夢などあるじゃなし」と「BANG!」ということになる。
どちらかと言えば、後者の方が好きなのだが，それは歌詞や態度や深入りした事情ではなく，ただ単にそちのほうがプログレっぽかったからなんだけど。
圧力は前者の方が高いのかもしれない。
一曲目からこんな歌詞だ

遠くに見えるものはありゃなんだ
村の火葬場の煙突じゃないし
ストリップ劇場ののぼりじゃないし
落ちたこの世のかけらじゃないし
地球が垂らした糞でもないし
まさか幸せ乗せた白い汽船じゃないだろう

月賦で買ったテレビに誘われ幸せだからと手を叩き
悪の季節を恋の季節にすり替えられて
また会う日まで
空に太陽ある限り

遠くで呼んでいる奴はありゃ誰だ
夜中に逃げた親父じゃないし
とうとう狂ったあいつじゃないし
いつか堕ろした子供じゃないし
道徳教えた先生じゃないし
まさか微笑み浮かべた希望の友じゃないだろう

希望の前に諦め覚え
生まれる前に死ぬこと覚え
与える前に盗みを覚え
手を組むたびに裏切り覚え

遠くに見えるものはありゃなんだ
食った豚の祭りじゃないし
永遠の処女の群れでもないし
催促された家賃じゃないし
まさか幸せ一杯の夢の小島じゃないだろう
まさか幸せ一杯の平和の小島じゃないだろう

（以上、「あなたもスターになれる」三上寛作詞」

ううむ。
明るくない、というか暗い。
青森だからなのか。
五所川原だからなのか。
とにかく三上寛の詩は暗い。
そして、その暗さはゴシカルなものではなく、妙に這いつくばったものなのである。
ワーキングクラスの暗さなのである。
そこに風土が関係しているのか，妙にどろっとしていて、政治的な歌も四畳半の畳の腐敗に似たふかふかの汚穢があり，罪がある。