長い夢を見た

えらく長い夢を見ました。

事の発端は……といっても、夢の中のことだが……タモリである。

タモリの付き人の女性が「芸達者だ」と周りから言われている。
ちょっとがたいの良い女性である。
彼女は確かに司会やら踊りやらをやらせても、気が利いて機敏だった。

そんな彼女が今行きたい所はどこか？
「インドが好きなんですよ、『Oolisia』に」
これはフーリシアと読むのだそうだ。

僕の卒業式もそこで行われることになっていた。
そこはオーストラリアのインド領で、海さえ濁ってガンジスの匂いがする所だ。
僕はそのことを飛行機の中で（つまり引き返すことの出来ない上空で）始めて知った。

ゆるく弧を描いた錆び色の島である。
到着後、その足でタクシーの中へスライドし「一番大きな町へ」と言うと、車は熱帯雨林を横切る。
すぐに現れたのは四角いフロート、いや、船着き場。
四角く錆びた直方体にしか見えず、みすぼらしいというよりも“インド”らしい。
川もやはり……川？　いや、“海”もやはり泥の色だった。

船は長いばっかりで少しも綺麗じゃない。
見れば、木の皮で作った船もちらほらある。
なんだか乗るのが怖い、乗ったらインドへ行ってしまいそうだ。
でも「行かぬより行け」と言われた気がした。
僕は一番大きな町へ、渡河。

卒業式は行われていた。
小学校の卒業式だった。
僕の式はもう終わったのだろう、小さな小屋に入ると、リコーダーやギターなどで音を出した。
ひまだったわけじゃない、音を出したかったのだろうと思う。
僕の友人がどこかで怒られている。
祭りの音が聞こえる。
僕はギター。現地の人がオカリナのような楽器を使う。もう一人、友人が低い管楽器。
中々いい具合だ。
現地人の音は奇妙奇天烈でノイジーだったから、僕がそれに軸をつける。
ギターはコードばかりを鳴らす。
それからリコーダーに持ち替えて、吹いていると中々これは画期的じゃないかと言うことになってきた。
うん、そうだ。カッキ的だ。
段々、みんなそういう気分になってきた。
僕も調子に乗って来た。
「血が出ている」
リコーダーが下の歯にちょくちょくあたっていたので、歯から血が出た。

僕は小屋から出ると帰りの船のことを考えた。
木の皮で出来た船がプカプカ浮いていた。
タクシーで来てしまったので、帰れるかどうかわからないな。
熱帯林の下を珈琲色の水が流れる。
長い、遠くまでの熱帯林で、僕は町を見ていない事や空港のことを考えた。