忍者ブログ
え、まあ、趣味とか雑事とかだぜ?
[19]  [18]  [17]  [16]  [15]  [14]  [13]  [12]  [11]  [10]  [9
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

芸術が新しい宗教のような価値を得るか、娯楽の敷衍か、社会的に必要な機能か、様々な立場の人々が様々に語っています。
ところで、大別すると芸術を無価値とする(或いは害悪とさえ言う)者と有価値とする者にわける事ができるようです。
これはどういったわけでしょうか。
まずもって、無価値とする立場を考えると……それはひとえに社会的有意性の無さに起因しています。
つまり衣食住を中心とし、単純に生命と健康の維持、子孫繁栄、秩序の形成、といったものとは無縁である、という理由によるものです。
一方で有価値とする場合、それを心理学的に意味があり、社会的にも人間の生活を安寧にさせすごし安くし、なによりも“人間的”な営為だとしているようです。

確かに動物は絵画や彫刻や音楽を積極的に作りませんし、拝観拝聴とは縁が無い。
「しかし、動物には着飾るものもいるのでは?」と言う方もおりましょう。
古来有名なところでは孔雀がありますが、昨今知れ渡った印象深いものにアオアズマヤドリがいます。
なるほど、これは変わった鳥です。
青い色の物を探してきては巣を飾り、中々壮観の家を建てる鳥です。
青色を大量に集めるのは並々ならぬ労苦であろうとは思うのですが、その艱難辛苦をものともしない雄鳥も甚だ情熱的なようで。
他にも着飾り、踊り、歌う動物を知っている人は少なくないでしょう。
さて、こういった動物が一見、芸術に接近している様に見えるのではないか?
だが、この動物達は恒久的に芸術に奉仕しているわけではないのです。
専らそれは女性に対して自分の魅力をアピールする手段でしかないわけですから、同性の作った作品なんぞ眼にも入らぬ、邪魔なだけ、というわけです。
我々が何かの作品を作る場合に……これはもっと厳密に言うと、何か“芸術”という漠然とした概念を念頭に置いて作る場合に……決して女性に対してアピールを繰り返していると言うわけではないのです。
それは「女性に対する手段」ではありません。
「では何に対する何か?」という問いに言下には答えられませんが、少なくとも女性に対するセックスアピールでない事だけは確かなようです。
その仕事はファッションや会話の話題やヒーロー性に任されているようです。
私は、繰り返し「女性に対して」と言っています。
これは、動物界では『オス → メス』のアピールはあっても『メス → オス』の構造は無いからです。
アピールするのは常にオスです。
しかし、人間の場合は女性も芸術を良くします。
更に言えば、人間は誰の作品かどうかを確認せずとも作品を楽しむことが出来ますし、故人であれ工房であれ、それほど問題になりません。
『要は作品の良し悪し』
というのは、芸術に関して極当り前の言葉ですが、動物的ではないです。
動物にとっては『誰が(どのオスが)』が重要になるのです。
男性が名も知らぬ作家達の展覧会で感心しきりに見入っている姿は動物にとっては、甚だ理解し難い光景かも知れません。
また、エクスキュルによれば、人間と動物ではそもそも視覚、聴覚、脳、そのほか感覚器官と処理器官がまったく違うそうです。
すなわち人間が見て感じている事を単純に動物に当てはめてもまったく錯誤でしか無いと言う事になります。
良く知られている例では、人間は色を見分けていますが、色を見分けられない生物もいます、また人間よりも多くの色を見ている生物もいますし、魚眼、複眼では像の見え方そのものに差が生じます。
受容器官に差が出ているのみならず、処理器官……つまり脳の構造が全然違う。
ということは、我々が獲て感じている事とはまったく違うわけです。
これでは比べるのも妙というわけです。

動物的な、つまりアピールとしての芸術じゃ無い事はわかりました。
(しかし、疑念の余地はあります。実際には芸術は全てアピールだが、その感情は無意識下にあり顕現していないとも考えられます……)
では芸術の価値はなんだ?
これは古来からの疑問であります。
有史以前も触る必要がありますが、まずはギリシア……芸術の一大転機と見なされるルネサンスがもっとも足しげく逍遥した古代ギリシア……を起点にしてみます。
既にローマ帝国の下に置かれていた一世紀にプリニウスという人がいます。
彼はこのような事を言っています。
その作品は都市を一つ買えるだけの価値があった。
と。
これは紀元前4、3世紀の作品のことを言っているのだと思われますが、今から2400年以上前には作品一つと都市が比べられる程だった、ということです。
勿論、これはプリニウス一流の比喩かもしませんが、少なくとも大層な価値があった事は確かです。
それに比べれば我々の時代の美術などたかが数億と言えるかも知れません。

古代ギリシアの作家達は、名誉があった。
作者も多く知られ、作品にサインがあり、パウサニアスなどの史家が名を記していたりします。
これはもう十分な価値が認められていたと言うしか無いでしょう。
リュシッポスがアレクサンドロス大王の肖像を作り、ペイディアデスがアテナ像を作り、その他始めてアプロディテの裸像を作ったのは誰、美しいクーロス像(青年像)を作ったのは誰、といった名誉も知られています。
往古、美術に対する態度は貪欲でさえありました。
美しい青年像(小顔ですらりと身体の長い)の様式を確立したとして誉められた者がいるかと思えば、迫真性に富んだ躍動感を与えた者、些か猥褻とも思える表現に挑んだ者、画家アンティメネスはこんな逸話を残す程であります……
ある画家に会いに行き、偶々留守だったので挨拶代わりに板に細い線を描いた。
帰ってきてそれを見つけた画家はアンティメネスだと思い、その線の上に更に細い線を描いた。
再び帰ってきたアンティメネスは、その上にそれ以上ない細い線を描いた。
またまた帰ってきてそれを見た画家はアンティメネスを迎えに駆けて、自分達の面白い技量合戦を披露しようと奉納したらしい。
それは、プリニウスに言わせれば、遠くから見ればただの白地の板に見えるが、それがかえって印象深く目立ったそうである。
こういった職人は、芸術家として誉めたたえられます。
それは市民からであり、国家からであり、君主からでありました。
これは社会的有意性を認められていたと言うことです。
ホメロスは段違いにせよ、サッフォーを初めとする詩人やソフォクレスなどと同じような意味での賞讃であったと思われます。

ところで、その作品なのですが、表現の仕方とリアリティに重点が置かれていたようですが、どうもそれだけではないようです。
確かに、迫真の彫刻は多く、それが基本です。
彫刻ということであれば、その肉体表現のリアリズムはほぼ完成に近付いておりました。
絵画はどうか?
これは今だ平面的で、空間の出し方と言えば、前後を重ねる事。
右を向いている人であれば、ほぼ確実に左足を前に出して空間感を出そうとしているし、名案の使い分けによる立体感もない。
描写もなされていない。
エジプトからの影響が顕著である。
などと色々とありますが、パースによる遠近法を試みた後は見つかっていますし、ポンペイの壁画を見れば、そのリアリティはほぼウッチェロの先触れとして紹介されても良いくらいの出来です。
我々が多く目にする古代ギリシアの絵画は、壺絵などがほとんどで絵画としての独立性に薄く、また地と黒色との二色と言う限定を含んでいるものです。
タブローとして独立しているとは言い難いものです。
エジプトには木材に白亜地の板絵があったらしいのですが、これといった板絵は存在していません。
中心は、あくまで装飾としての絵画でした。
壁画、壺絵、などです。
で、例えばクレタでの海洋生物様式……例えばタコの図像はミュケナイに入り抽象化され、完全に紋様的な装飾に変容する事さえありました。
現実の模倣よりも抽象的な図像の方が好まれた場合もあったのです。
無論、抽象芸術という概念はありませんでしたが、デザインとしての抽象化は行なわれていたと言う事です。
これはつまり、より好ましい絵画的形体に、現実とはまた別の二次元上の形体に変型させる事が近代の発見ではなく古代からあったと言う事であります。
人間の頭脳の作用として、それは過去にも持ち合わせていたようです。
しかし、それはただそれだけの意味ではなく、より美術的なものを選んだと言う意味でもあります。
単純な模倣ではない物にも価値があった。

PR
Comment
name 
title 
color 
mail 
URL
comment 
pass    Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメントの修正にはpasswordが必要です。任意の英数字を入力して下さい。
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
ツイッター
夢占い出来るです キーワード入れてくだしあ
夢占い 夢ココロ占い (キーワードをスペース区切りで入力してください。)
カレンダー
05 2025/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
orzorzorzorzorzorz
orzorzorzorzorzorz
プロフィール
HN:
くら
性別:
男性
趣味:
映画、音楽、文学。と至って普通の趣味。 ああ、あと最近は自転車レースも好き
ブログ内検索
最新コメント
[05/22 BlogPetのこうさぎ]
[12/13 くら]
[07/06 くら]
[07/04 くら]
[07/03 くら]
最新トラックバック
Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]